2024年3月23日土曜日

春ディズニー2024・三日目

 楽しい旅行ですが、最終日となりました。

おまけに雨模様☔

この日はマジミュもクラビも一回目公演が午後1時以降。

で、エントリーしてみましたが…

結果、 全 滅 (# ゚Д゚)💢

春休みで混雑してるし土曜日だし、というのはわかりますが、それでも今回、三日間の旅行で エ ン ト リー 全 滅 て…💢

さすがにちょっとブチ切れそう(#^ω^)💢

ま、ブチ切れても一度外れたエントリーがアタリに変わるわけはないので、泣いて諦めるしかありません…

そして泣いている時間があれば少しでも楽しむべきなのがパークです。(`・ω・´)シャキーン

それに、クラビはともかく、マジミュは自由席がある!(о´∀`о)

(あとでその油断が悲しい結果になるんですが、それはさておき)

とりあえず気を取り直して、ランドバンド鑑賞。

その後、待ち時間25分のスター・ツアーズへ。

スター・ツアーズは久しぶりだったので、とても楽しかったです(о´∀`о)

トゥーンタウンへ移動して、この旅行では2回目のロジャーラビットのカートゥーンスピンを楽しんだら、時間はもうそろそろお昼。

マジミュ一回目公演の自由席を取るため、フォレストシアターへ。

ところが。ところがですよ、自由席のQラインが見当たらない…😰

なんと、一回目公演の自由席はすでに満席でラインカットされていたのでした…😱

開演までまだ一時間くらいあったと思うのですが、マジミュ人気恐るべし😩

仕方ないので小雨が降る中、ハモカラの地蔵開始。

もしかしたら中止かも?という不安の中、パレード開始の放送が!ヽ(=´▽`=)ノ💖

ダンサーさん全員、レインコート姿。

ラプンツェルもレインコート!カワ(・∀・)イイ!!💞

数年前のパレードだと、雨の日はレインコートのミキミニを見ることができたのですが、今は濡れても大丈夫なんですね。

ちょっと残念…?😅

パレード中にだんだん雨脚が強まって、レジャーシートや荷物が少し濡れてしまったのですが、それでもパレードを見ることができてよかったです!(≧∀≦)✨️

パレードが終わったら、夫と子供をパークに残し、私は一足お先に帰宅するため退園しました。

末尾になりましたが、パークキャストの皆様、ホテルスタッフの皆様、ありがとうございました。🙏

JR職員の皆様も、お世話になりました。皆様のおかげで、快適に旅を終えることができました。🙏

また次回の旅行でも、よろしくお願いします😊🙏

二日目にもどる

2024年3月22日金曜日

春ディズニー2024・二日目

ディズニー旅行二日目。富士山を見ながら朝ご飯です🍴😋

パーク到着は朝10時くらい。40周年プライオリティ・パスはすでに残り少なくなっていましたが、ニモのシーライダーのパスを取ることができましたヽ(=´▽`=)ノ

ということで、とりあえずエレクトリックレールウェイでポートディスカバリーへ。

この日はご覧の通り、一日びっくりするような快晴!でした。

この上天気があともう一日、続いてくれたらよかったんですけどねえ…😑

ま、それはさておき、シーライダーのパスが使えるようになるまで時間があったので、アクアトピアで遊んで、それからシーライダーへ。

シーライダーのあとは子供のリクエストでアラビアンコーストへ徒歩移動。

その途中、晴れたロストリバーデルタの風景があまりにも美しかったので連写したら、グーグル先生がパノラマにしてくれました(≧∀≦)


↑ぜひクリックして大画面でごらんください!😄

フライングカーペットのお隣、シンドバッドは休止中でした。

ジャスミンのフライングカーペットのあとは、前回同様、カスバ・フードコートでちょっと休憩。

その後、キャラバンカルーセル→マーメイドラグーンのワールプール→アメリカンウォーターフロントに戻ってBBB鑑賞、というコースでした。

ちなみにBBBのエントリーはハズレました…😒

しかし!自由席のおかげで無事鑑賞できました!ありがとう、自由席ヽ(=´▽`=)ノ💖

実はキャラバンカルーセルのあと、夫はBBB、子供はワールプールと行きたい場所が分かれたので、私は子供に付き合ってワールプールへ行ったのですが、ワールプールに乗り終わったところで夫から「まだ自由席空いてるよ」という連絡があったので、急遽アメフロに戻り、なんと開演20分前という時間にもかかわらず、自由席で鑑賞することができたのでした!😊

BBBのあとはちょうどハーバーショー「レッツ・セレブレイト・ウィズ・カラー」が始まる時間だったので、ミッキー広場のそばで立ち見。


鼻と鼻をくっつける仲良しミキミニ😄


予約した夕食の時間までカフェ・ポルトフィーノで休憩。

ケーキセットをいただきました(゚д゚)ウマー

夕食はいつものレストラン櫻。

予約は午後4時40分という夕食には早い時間なので、いつもならほとんど待たずに席に案内してもらえるのですが、今回はなんと満席、ウェイティングスペースもいっぱいで、しばらく待たねばなりませんでした。

こういう日もあるのね…😕

夕食後はビリーヴ!の場所取り…ではなく、今回は子どものリクエストで、久しぶりにソアリンに乗ることになりました。

ちなみにこのときの待ち時間、160分😭

待っているあいだにビリーヴ!が始まり、そちらもチラ見しつつ、ひたすらQラインを進みます。

待っているあいだに見つけた隠れミッキー↑😆

久々のソアリンはやはり感動的でした(≧∀≦)✨️

ソアリンに乗り終わったら閉園10分前だったので、この日はここまで。シャトルバスでホテルへ帰還いたしました🚌

三日目に続きます!

2024年3月21日木曜日

春ディズニー2024・一日目

 12月に行ったばっかりやん!

というツッコミが聞こえてきそうですが、またもや行ってまいりました。そう、ディズニーです。

写真は車窓から見えた富士山。

今回は前回のような大きなトラブルはありませんでしたが、春休みということで新幹線は満席、自由席からあふれた人が我が家の取った指定席に座ってたというちょっとしたことはありました…ま、混雑する季節の新幹線あるあるですが😩

とにもかくにも、予定通りの時間にパークに到着、時刻は午後2時を少し過ぎたところ。

昼のパレード、「ハーモニーインカラー」(ハモカラ)を立ち見で見られる!?…と、思いきや。

パレードは風キャンでした…😭

天気予報アプリで強風注意報や雷注意報が出ていたので、なんとなく予想はしていたんですが、やっぱりダメでしたね(;´∀`)

屋内ショーは、マジミュは時間がレストランの予約時間にまるかぶりであきらめ、クラビは全員エントリーハズレ、自由席は今年2月5日から設けていないとのことでこれもあきらめました。

人生、こういう日もあるさ…(ノД`)シクシク

とりあえず、レストランの時間までアトラクションめぐりのため、ファンタジーランドへ。

あ、時間が時間なので40周年プライオリティ・パスは全滅でした☆

子どものリクエストでアリスのティーカップ…は、子ども一人だけで乗って、三半規管の弱い年寄り二人はそばのベンチで待機。

続いてキャッスルカルーセルのあとはスモワーと行きたかったのですが、激混みだったのでエレパ後に行くことにして、久しぶりにアドベンチャーランドのウェスタンリバー鉄道へ。


続けてすぐそばのジャングルクルーズにも乗りたかったのですが、待ち時間が40分以上!

レストランの予約に間に合わなくなると思ったので、じゃあカリブの海賊ならどうだろうと思ったのですが、こちらも35分。

ギリギリで微妙~な時間でしたが、夫がアトラクには入らずレストランに先に行っておいてくれると言うので、お言葉に甘えることにしました(о´∀`о)

でも、あとでよく考えたら、お隣のウェスタンランド内にあるマークトウェイン号だったら、待ち時間もそんななくて全員で乗れたよね~と気がついて、ちょっと反省…

まだまだ修行?が足りませぬ😞

しかしまあ思いの外キューラインの進みが早くて、レストランの予約時間とほぼ同時に入店でき、夫をあまり待たせずにテーブルに案内してもらえたのはよかったです(о´∀`о)

そのレストランはもちろん、クリスタルパレス・レストラン!

お腹いっぱいでもついたくさん取ってしまうデザート(;´∀`)

だってどれもかわいくて美味しそうなんだよ~!😆

夕食が終わったら、ぱつんぱつんのお腹を抱えてエレパの場所取りです。

昼のパレードが風キャンだったので、エレパもひょっとしたら…と思っていたのですが、強風注意報が解除になったおかげか、無事パレードを見ることができましたヽ(=´▽`=)ノ

汽車の蒸気で霞むミニーちゃん😂

シンデレラフロートは、個人的には以前の、魔法の呪文でドレスの色が変わるやつのほうがロマンチックで好きだったなぁ😓

12月ほどではないにしても、寒い夜でした。

エレパ後の我が家の定番コースはたいていフィルハー→ハニハン→モンスターズ・インクなのですが、今回はハニハンがあいにく休止中だったのでフィルハー→スモワ→モンインというコースにしました。

昼間はダダ混みだったスモワも、夜ともなれば楽勝(๑•̀ㅂ•́)و✧

ま、モンインのほうはそんな楽勝とまでは行きませんでしたが、それでもラインカットに間に合ったのは僥倖といえるでしょう(≧∀≦)

モンインを楽しんだ後は、もう閉園時間。

急いでワールドコンフェクショナリーでお土産を買ったら、一路ホテルへ。

一日目、終了😌

二日目に続きます!

2024年3月19日火曜日

紅蓮の禁呪143話「凍える世界で・十」

 

「それはありがたいけど、移動の時間がかかりすぎないか?」


 竜介が言った。

 日可理たちが今滞在している滋賀県のホテルからは、高速を飛ばしても片道三時間。

 一日で調整がうまくいくとは限らないのに、時間のロスが大きすぎる。


 しかし、術の調整について、彼女以上の助言者は望めないから、悩ましいところではある。


 すると、日可理はこともなげにこう答えた。


「わたくしが直接そちらへうかがうわけではございませんよ?」



 会合から三日目の早朝。

 日可理と約束した時間に竜介が結界石の広場に着くと、淡い水色のメイド服を着た少女がふわりとどこからともなく姿を現した。

 日可理の式鬼、朝顔である。


「おはようございます、竜介様」


 朝顔は雛人形のような白い顔にあるかなきかの笑みを浮かべると、日可理の声で言った。


 日可理は式鬼を媒体としてこの場に「来た」のだった。

 これなら移動時間はかからない。

 それに、実物の日可理と二人きりになることについて、いまだ多少なりとも心理的抵抗がある竜介にも、これは願ったりだった。


 時間が惜しい彼らは、すぐに術の調整に入った。

 竜介が二日前に術の起動に使ったのと同じ法円――龍垓の記憶と同じもの――を、自分の足元の地面に出すと、朝顔は早速その上にかがみ込み、法円を覗き込むようにして調整を始めた。


 彼らが術に使う法円は、中心の円を囲んで四つの小円が前後左右に配置され、それをさらに大きな円が囲んでいて、小円と小円の間を複雑な幾何学模様が埋めている、というのが基本的の形だ。

 幾何学模様は術によって異なっているが、雷迎術の場合は、他にも内部の小円のラインが二重になっていたり、一番外側の円のさらに外縁も幾何学模様がとり囲んでいるという違いがあった。


 これら小円のうち、術者に対して前後に並ぶ二つが力の収束と放出を制御する、いわば術の発動に最も重要な部分で、たいていの術はここを正しく調整しさえすれば、失敗することはない。

 だから、竜介も日可理も、前回の失敗の理由は、龍垓の法円をそのまま使ったがために、自分で制御できる以上の気を集めてしまったか、あるいは力の収束と発動の微妙なバランスが崩れたのだろう、ということで同意していた。


 朝顔が小円のどれかに触れるたび、法円のすべての幾何学模様が形を変えていく。


 やがて調整が終わったのか、朝顔は立ち上がって法円から距離を取ると、仕上がりを確かめるように眺めてから竜介に言った。


「では、術を立ち上げてみてください」


 竜介はうなずき、全身の気を高めた。

 彼を取り巻く青い光輝がまばゆいほどになるにつれ、逆に空はにわかに分厚い雲がわきあがって暗くなっていく。

 彼の周囲で、金色の稲妻が弾け躍る。

 周囲の木々は風もなくざわめき、驚いて飛び去る鳥の声や羽ばたきが騒がしい。

 重苦しさを増す術圧の中、竜介の視界の端では法円の周囲の小石が重力を失い、浮き上がるのが見えた。

 そのとき、くるくると形を変えていた法円の模様がぴたりと停止し、一際強く輝いた。

 一昨日はこの直後、法円に収束した超自然の力が一気に体内を駆け抜け、凄まじい衝撃と落雷で危うく大火傷を負うところだった。

 日可理の腕前を信じないわけではないが、それでも竜介は衝撃に備えて思わず身構えた。


 ところが。


 衝撃はなかった。

 それどころか、次の瞬間、法円の輝きは気が抜けたように弱くなり、術圧も消えてしまったのである。


 調整した法円では、術は起動しなかった。

 一昨日のように寝込んだりするよりはいい。

 が、逆を言えば、調整前の設定がある意味、「正しかった」ということだ。

 少なくとも、術を発動できたのだから。


 前後二つの小円だけでなく左右のものまでとなると、とたんにやることが複雑になるようで、その後、法円の調整は難航した。

 朝顔の、基、日可理の説明によると、術の威力に直接関わる前後の小円に対し、左右の小円は術を発動させる時間と空間を指定するためのものらしい。


 中の小円がすべて二重という法円は、白鷺家に伝わる古文書で見たことはあるが、実際に扱うのは初めてだ、と日可理は正直に言った。


 普通の法円とどう違うのかと竜介が尋ねると、

「より高次のエネルギーにアクセスできるので、術の威力が大幅に変わってきます」

 と、朝顔が日可理の声で答える。

「より高次のエネルギー?」

 おうむ返しに尋ねると、彼女は言った。


「御珠の力そのものということです」


 一般的な術は術者本人の持つ霊力や、天地に満ちる「気」の力を借りるが、雷迎術の法円はさらに術者の霊力の源たる御珠そのものにアクセスし、その力を利用できる、ということらしい。

 その代わり、法円の調整が間違っていれば、命取りになりかねない。

 日可理の説明を聞いて、竜介はぞっとした。

 一昨日、大した調整もせずに初見で起動して火傷と過労程度で済んだ自分は、とてつもなく幸運だったのだ。


 この日は午前にもう一回、午後にも一回と、合計三回、術の起動を試みてみたが、結局一度も術を発動させることはできなかった。

 三度目の失敗の後、朝顔が言った。


「申し訳ございません、本日はこれまでとしたいのですが、よろしゅうございますか?本宅の文書に今一度、当たってみたいのです」


 式鬼は基本的に無表情だが、日可理の声の調子から察するに、焦りと落胆が増しているようだ。

 竜介も疲労を感じていたので、彼女の申し出を快諾した。

「今日はありがとう。手間をかけさせてすまない」

 朝顔はゆっくり頭を振った。

「わたくしは当然のことをしているだけです。むしろ、汚名を雪ぐ機会をいただけて、わたくしこそお礼を申し上げます」

 ではまた明日、と言葉を残し、式鬼はその場の景色に溶け込むようにして姿を消した。



 冬の日暮れは早い。

 そして、木々が茂る山の日暮れはさらに早く、竜介が寺に戻る頃には空はまだ明るいものの、足元はすでに薄暗くなりつつあった。

 よほど憔悴が顔に出ていたのだろう、泰蔵・玄蔵親子が気を遣って、熱い風呂と少し早い夕食を用意してくれた。

 そのおかげで、落ち込んだ気分は一旦、多少上向いたけれど、未明から降り出した雨に再び彼の気持ちを空模様と同じく曇らせることとなった。


 日可理に今日の法円の調整は中止にする旨、電話をいれると、彼女も少し疲れた声で残念だと言った。

「わたくしは引き続き、書物に当たります」


 竜介も、何もしないよりはましだろうと思い、泰蔵、玄蔵の手を借りて寺の書庫から紺野家に伝わる文書を持ち出し、雷迎術に関する記述がないか調べてみることにした。


 最初は彼一人で書庫にこもるつもりだったのだが、薄暗い裸電球の明かりしかないのはまだしも、底冷えのする書庫で暖房器具を使うための電源がないのがつらくて諦めたのである。


 冷たい無情の雨はその日の夜までに雪に変わった。

 東京上空に停滞している寒波が、どうやらもうここまで来たらしい。

 そのことがさらに竜介たちの気持ちを焦らせる。


 だが、さらに翌日、新月まで残りあと二日となったところで、転機は訪れた。


※挿絵はAIイラストです。Bing Image Creatorにて生成しました。

2024年2月11日日曜日

紅蓮の禁呪142話「凍える世界で・九」

 

 夢を見た。
 紅子の夢だ。
 夜で、月が出ていた。
 紺野家の庭で、二人して夜空を見ている。

 二人で月を見上げた、あの夜のように。

 あの日と違うのは、二人とも、何も話さなかったことだ。
 竜介が隣にいる紅子に視線を遷すと、彼女もこちらを見た。
 彼女はたしかにそこにいる。
 よかった。
 竜介は胸に安堵が広がるのを感じた。

 どうして失ってしまったなどと思ったのだろう。
 彼女はここにいるじゃないか――

 彼の安堵を察したように、紅子は微笑む。
 言葉など要らない――そんな気がした。
 白い月の光に浮かぶ彼女の輪郭には、確固とした陰影があり、それは重量を持つ実体のはずだった。

 だが――

 紅子の存在を確かめるように伸ばした彼の指先が、柔らかな頬に触れようとした、その瞬間。
 彼女の姿は、文字通り霧散した。

 目を覚ますと、見慣れた自室の天井が滲んで見えた。
 夢を見て泣くなんて、いつぶりだろうか。
 彼は寝間着の袖でしずくを拭うと、苦笑しながら起き上がった。

 夢が甘ければ甘いほど、現実が苦い。

 泰蔵の寺で黄根老や日可理たち姉弟と会ってから、すでに一週間近くが経とうとしていた。
 明日は新月。
 黒帝宮に向かう、運命の日が眼の前に迫っている。



 顕化を持つ者が使えるという究極の秘術、「雷迎」。
 それを龍垓と同じように使えるようになれ、と一週間前、黄根は竜介に厳命した。
 日可理から共有された龍垓の記憶をなぞれば、理屈の上では、竜介も難なく雷迎を使えるはずだ。
 ところが、黄根の言葉に難色を示した人物が、その場に一人だけいた。
 日可理である。

「雷迎については、龍垓でさえ、一生に何度も使うべきではないと考えています。それほど負荷が大きい術を、なるべくならわたくしは竜介様に使っていただきたくありません」
 それに、と彼女は言った。
「それに、まだ封印から目覚めたばかりの今の彼が使うとは、わたくしには思えないのです」
 伺候者に実体を与えるために黒珠の力を使っている今、龍垓は確かに、自分の力の回復を後回しにしている。
 竜介は龍垓の全身から発する底冷えのするような力の気配を思い出し、あれでまだ未回復なら、完全に回復した彼はどれほどの強さなのかと、今更ながら暗澹とした気分になった。
 一方、朋徳は日可理の反論を苦い顔で否定した。

「わたしは見たのだ」

 儀式のとき、龍垓が雷迎を使うところを、「見た」のだ。


 会合の明くる日、竜介は早朝から、例の結界石がある広場へ来ていた。
 日可理は否定的だったが、黄根が「見た」と言う以上、最悪の事態に備えて、龍垓と同等ではないにしても、雷迎術を起動できるようなっておくに越したことはない。
 龍垓の記憶から鑑みるに、雷迎は名前の通り、かなり爆発的な稲妻を発する術らしい。
 そんな危険な術を試すには、人家から離れたこの場所はうってつけだ。

 紺野家に伝わる文書にある、顕化を持つ者だけが使えるという伝説の術、それはおそらく雷迎のことで間違いないだろう。
 文書のほうには、龍に化身して空を飛ぶことができた、などという表現があるが、天地の気を自分の身に集中させるという術の過程で、その集中した気の流れが天地を結ぶ光の柱となるため、それが龍に見えたのかもしれない。
 空を飛ぶ云々は単なる誇張としか思えないが。

 ところで、賢明なる読者諸氏はすでにお気づきと思うが、彼らが扱う術には、法円――いわゆる「魔法陣」のようなもの――を必要とする術と、不要の術とがある。

 竜介が使う雷撃、鷹彦が使う「かまいたち」――風撃、などなどは法円を必要としない。
 一方、朋徳が竜介を紅子の意識界に送ったときの術などは法円を要する。
 法円は術の発動において気の流れや力の収束、効果の大きさを調整するパラメータの役割を果たすものだ。

 ちなみに白鷺家の姉弟が使う呪符は、いわば術のプリセットで、法円を必要とする複雑な術であっても速やかな発動が可能になる。

 雷迎術がどちらに属するかというと、法円を必要とする術、それもかなり複雑な調整を必要とする術だった。

 そしてその術を試してみた結果だが、結論からいえば術は失敗し、その上、彼はその後ほぼまる一日寝込むことになってしまった。

 あの龍垓が一生に何度も使うべきではないと考えるほどの術である。
 身体にかかる負荷を少なくするため、竜介も慎重に慎重を重ねて術を起動したつもり、だったのだが――

 術のパラメータを調整しようにも、なにぶん龍垓の記憶しか参考になるものがない。
 同じ顕化を持つ者とはいえ、むこうは人の姿をした異形である。
 その異形の者が自分用に組んだパラメータを、人間である自分にほとんどそのまま適用したのだから、術が失敗するのは当たり前といえばその通りで、むしろ死ななかっただけ幸いというべきなのかもしれなかった。

 文字通り這うようにして泰蔵の寺に戻り、玄関先で慌てふためく師を見たと思ったら、そのまま意識を失ってしまった。
 気がついたときには翌日の日暮れ、寝間着姿で客間の布団に寝かされていたというわけだ。

 前日着ていた服がどうなったかというと、見るも無惨に焼け焦げていて、とくにコートはポケットに入れていた携帯電話が燃えたらしく、大きな穴が空いていた。
 もし薄着の季節だったなら、ひどい火傷を負っていたかもしれず、怪我がないのが奇跡といえた。
 寝込んだ理由も単なる過労だったようで、次の日には問題なく起き上がって動けるようになった。

 しかしながら、時間が潤沢にあるわけでもないこの期に及んで、一日のロスは痛い。

 ようやく起き上がれるようになって彼が最初にしたのは、白鷺家の二人に電話で雷迎術を発動する呪符を作れないか相談することだった。
 つまり、竜介用にカスタマイズされたパラメータを設定した呪符ということだが、日可理は電話口で、申し訳なさそうに言った。

「調整する時間が、どう考えても足りません」

 雷迎術ほどの複雑で危険な術を、自分ではない誰かのために一から微調整して呪符に落とし込んでいくには、あと数日では無理だという返事だった。
 しかし、意気消沈する竜介を気の毒に思ったのか、彼女はこう付け加えた。

 具体的に法円を調整する手伝いなら、できるかもしれない、と。

2024年1月25日木曜日

紅蓮の禁呪141話「凍える世界で・八」

 


 カーテンの隙間から差し込む日差しがまぶしい。


「春香~!起きなさい!」


 台所から、母の呼ぶ声が聞こえ、春香はものぐさに布団から手だけを伸ばして枕元の目覚まし時計を見た。

 短い針の位置は、おおまかに八時。

 室内の気温はまださほど上がっていない。

 布団から出るべきかどうか逡巡していると、トドメの一声。

「朝ごはん、片付けちゃうわよ!」

 観念して布団を出た。

 パジャマの上にフリースを羽織って、のろのろとダイニングキッチンへ。

「冬休みだからっていつまでもダラダラ寝てちゃダメでしょう」

 母の小言に適当な相槌を打ちながら、春香は卓上に並んだ朝食を食べ始めた。


 休日の、いつもの風景だ。


 ここが、春香の東京の自宅ではなく、父親の単身赴任先である北九州市の社宅だということを除いては。



 紅子の父、玄蔵が何やら改まった様子で手土産を持って松居家を訪ねたのは、今から二週間ほど前のことだった。

 彼は玄関に出てきた春香と彼女の母に、しばらく実家に帰ることになった、と言った。

 つまり、一色邸を無人にするということだ。

 これは紅子の身に何かあったに違いないと思い、春香は紅子の安否を尋ねたが、彼は曖昧に言葉を濁して答えない。

 いよいよ彼女が訝しく思っていると、代わりに彼は二人に向かってこう言った。


「すみません。こんなことを言うと変だと思われるかもしれませんが、一つ忠告させてください。今すぐ東京を離れてください。今年の冬はこれから大変な寒波が来て、この街は住めなくなります」


 それだけ言い残して帰る玄蔵の後ろ姿を、春香たちは呆然と見送るしかなかった。


「紅子ちゃんのお父さん、いったい何が言いたかったのかしらねえ」

 当初、春香の母はそんなふうに冗談まじりに笑い飛ばし、気にする様子はまるでなかった。

 確かに、こと東京に関していえば、十二月に入ってからは冷え込む日が多くなってはいた。

 しかし、気象庁の予報は全国的に暖冬だったし、東京上空に居座る寒気もいずれは消えるだろうと予測されていたのだ。

 そしてそれは、玄蔵の訪問のまさに翌日から、急激な冷え込みと雪の日々が始まったあとも、変わらなかった。


 少なくとも、最初の数日は。


 気象庁が手のひらを返したように、この寒気は年明けまで終わらないと言い出し、東京の天気予報が連日雪のマークだけになるのに、さほど時間はかからなかった。

 メディアは、何百年かに一度の異常気象だと騒ぎ、一週間もすると、雪のせいで交通機関が麻痺し始めた。


 各教育機関は通勤・通学困難を理由に冬休みの開始を大幅に繰り上げ、春香の高校も大量の宿題とともに早い冬休みが始まった。

 最初は早まった冬休みを喜んでいた春香だったが、連日の雪で、友達と会うことさえ思うに任せず、だんだんうんざりし始める。

 気圧と気温の急激な変化からくる片頭痛で暗い顔をしている母と、家の中に二人きりともなれば、なおさらだ。

 そんなとき、母がこんなことを言い出した。


「ねえ春香、学校が始まるまで、お父さんのところに行かない?」


 聞けば、単身赴任中の父に電話で今の状況を相談したところ、少し狭いがこちらに来たらどうかと父から言われたのだという。

 北九州市は雪どころか、ここしばらく雨すら降らない上天気続きらしい。


 実は、冬休みに入る前、クリスマスに友達の家に集まってパーティーをしようという計画があったのだが、母がこの話を持ち出した頃には、参加する予定だった友人たちの半分以上が、寒波を避けて東京を離れてしまっていた。


 東京の自宅に固執する理由など、春香にはもうなかった。


 交通経路については、北九州まで行く新幹線の切符がどうにか確保できた。

 けれど、とにかくどの列車も雪で本数が減っているせいで超満員だったのは閉口した。

 春香たちと同じく大きなスーツケースを転がしている乗客も多く、


 みんな、東京から逃げようとしている――


 春香はそんなことを思った。


 到着した北九州市の太陽は、道中の疲れも吹き飛ぶほど、まぶしかった。

 父から聞いていた通り、日差しが暖かく、風さえ温い。

 天国に来たみたいね、と母娘は笑いあった。

 本当に久しぶりの、心からの笑顔だった。


 2LDKの社宅は家族三人が暮らすには思っていた以上にやや手狭だったものの、冬休みの間だけ、と思えばさほど気にもならなかった。


 だが――


「――昨日の東京の最低気温はマイナス十五度で、記録に残る東京の気温としては史上最低を更新しました。

 都内では水道管の凍結や破裂による断水が続いているほか、先日の激しい雷を伴う降雪により停電が発生しておりますが、除雪作業が追いつかず、いまだ復旧には至っておりません。

 気象庁は、年明けにはこの寒さは緩むとの見方を示しています。

 しかし、それまでの都民の生活をどうするか、政府は緊急対策本部を設けて対応を急ぐとともに、埼玉や千葉、神奈川など近県への避難を呼びかけて――」


 春香は席を立ち、つけっぱなしになっていた居間のテレビのスイッチを切った。

 陰鬱なアナウンサーの声が途切れ、母が掃除機をかける音や、洗濯機のアラーム音、外ではしゃぐ子供の声が戻ってくる。

 なんの変哲もない、日常の音。

 けれどどんなに目を背けても、日を追うごとに東京が人の住めない街になりつつあることは、間違いなかった。

 まるで、玄蔵の言葉が不気味な予言だったように。



 朝食後、身支度を整えた春香は東京から持ってきた冬休みの宿題を尻目に、チカチカと瞬いてメールの着信を告げている携帯電話のフリップを開いた。

 こちらに来てから、両親に買ってもらった少し早いクリスマスプレゼント。

 この電話のお陰で日本のあちこちに散らばってしまった友人たちと連絡を取れるようになり、寂しい思いをしなくて済んでいる。

 液晶画面にずらりと並ぶ着信一覧の中に、目当ての名前を見つけて、春香の口元はだらしなくにまにまと緩んだ。

「なぁに、一人でニヤニヤしちゃって。気持ち悪いわね」

 通りがかった母のからかう声で彼女は我に返り、慌てて電話の画面を閉じると、

「もー、ほっといてよ!」

 と、怒った口調で言い返す。

 が、嬉しさで声が笑ってしまうため、あまり迫力はない。


 彼女のお目当てとは、もちろん、藤臣の名前だ。


「わたしじゃだめですか?」

 思い切ってそう告白したあの日、藤臣の返事は、

「今はまだ他の人のことは考えられない」

 という、至極当たり前といえば当たり前のものだった。

 けれど春香は食い下がった。

「じゃあ、考えられるようになるまで、待っててもいいですか?」

 もちろん、勝手に待つだけだ。

 藤臣に他に好きな人ができても、恨んだりなんかしない。


 重い女だと嫌われるかも?


 そんな恐れが一瞬頭をもたげたが、意外にも、運命の神様は彼女に微笑んでくれた。

 藤臣は苦笑しながらも、携帯のメールアドレスを教えてくれたのだ。

 彼から来るメールに今のところロマンスの兆候などかけらもなく、内容は日常的なことばかりだが、とりあえず、彼が受験のために東京を離れていて無事なことや、名古屋の親戚の家で世話になっていることなど、近況を知ることはできている。


 クラスの友人たちとのクリスマスパーティーも、初詣もなくなってしまった。

 この冬が終わっても、また元通り学校に通えるかどうかはわからない。

 そんな中、春香にとって、藤臣からのメールは何よりの慰めで、喜びだった。

 ただ――


 春香は、携帯のアドレス帳に目を落とす。

 紅子の名前と、自宅の番号。

 今の不安や喜びを一番に分かち合いたい相手のメールアドレスは、空欄のままだ。


 この空欄が、一日も早く埋まりますように。


 春香は心から、そう願っていた。

2024年1月11日木曜日

紅蓮の禁呪140話「凍える世界で・七」

 


 エレベーターのドアが開いた。

 黒いスーツのSPに先導されて廊下に出ると、分厚い絨毯の中に靴が沈んだ。

 正面にあるナイトラウンジに準備中の札がかかっているのを虎光は横目で見ながら、SPのあとについて廊下を左奥へと進む。

 同行者は彼の隣にいる父、貴泰と、彼らの後ろを歩くもう一人の黒服SPだけだ。

 SPは二人とも片耳に揃いの黒いイヤホンをつけており、そしてどちらも、スーツの左脇に不自然なシワがあった。


 武装しているのだ。


 SPたちは虎光と同じくらい体格がよく、そのせいで日本人男性としては標準的体格である貴泰が、まるで三人のSPに護衛されているようで、ここが路上ならどこの要人かとさぞ注目を集めたことだろう。

 しかしあいにく、廊下は無人だった。

 それどころか、人の気配すらない。

 いっそ不気味なくらい静かだが、これには理由がある。


 ここは、大阪の中心部からやや外れた場所にある、高級ホテルの一つ、その最上階。


 地階の特設駐車場から直通エレベーターでしかたどり着けないこのフロアにあるのは、虎光が先に見たナイトラウンジの他に、イベントホールを兼ねた会議室と、このホテルが誇る最高級の特別客室、「ラグジュアリーデラックススイート」と呼ばれる一室、それだけだ。

 このフロアが一般客に貸し出されることはなく、だからホテルのガイドブックにも一切載ることはない。

 このフロアを借りることができるのは、国賓か、国内政府要人。

 そしてこのフロアへ立ち入ることができるのは、フロアの借り主が許可した人物とその関係者のみ。

 貴泰と虎光親子は、本日、その借り主に呼び出されてここに来たのだった。


 彼ら一行がこのフロア唯一の客室の入り口に到着すると、扉の前にいたSPがマイクを口元に寄せて言った。


「ご到着です」


 すると、豪華な彫刻を施した両開きドアの片側が中から開き、またもう一人、別のSPが現れる。

 彼は「申し訳ございませんが」と断ってから、入室前に身体検査をさせてほしいと言った。

 実はエレベーターに乗る前にも一度、虎光たちは身体検査を受けているのだが、今のこの国の状況と、ドアのむこうにいる人物の地位を考えれば、念には念を入れるということなのだろう。

 これも彼らの仕事なので、虎光も貴泰も二度目の身体検査に甘んじたのだった。


 ようやく許されて入室したそこは、ヴィクトリア様式のインテリアでまとめられた瀟洒な応接室だった。

 入って正面にあるバルコニー付きの大きなフランス窓は、周囲に高い建物がないこともあって空が広く、開放感がある。

 冬至が近いにしては暖かな午後の光が差し込み、眼下に大阪の街並みを一望できるこの部屋は、なるほど要人の起居する場所にふさわしい。

 大阪の中心部にそびえる摩天楼もここから見ると、西日を受けて輝く水晶の林のように見える。

 虎光は思った。


 今の東京とはまるで別世界だな、と。


 部屋の中央に据えられた豪華なソファセットでは、壮年の男性と老人の二人が何やら話し込んでいた。

 壮年男性の背後には、メガネをかけた明らかにSPではなさそうなひょろりとした三〇代くらいの若い男がかしこまっている。

 三人とも仕立てのいいスーツ姿で、壮年男性と老人は議員バッジをつけていた。

 虎光は彼らの双方に見覚えがあった――主に、テレビや新聞などメディア上で。

 一人はこの国の政治を束ねる時の首相。

 もう一人は与党にいくつかある派閥のうち一つの長老だが、首相が所属する派閥ではない――というか、正確に言うなら対立派閥のはずだ。


 今がどれほどの非常時かよくわかる、などと虎光が思っていると、彼らの姿を認めた二人はソファから立ち上がり、貴泰のほうへ歩み寄ってきた。


「久しぶり」


 首相がそう言って貴泰と親しげに握手を交わすと、老人も同様に彼に握手を求め、


「紺野くんだね。黄根から話は聞いているよ」

 次いで、隣りにいる虎光に目をやり、ざっくばらんな口調で言った。

「君の社も、セキュリティサービスを始めたのかね?」


 虎光が吹き出しそうになるのをこらえていると、貴泰が憮然として言った。


「これは私の愚息です」


 おやそれは失敬、と、老人はわざとなのか何なのか大げさに頭を掻く。

 しかし貴泰は表情を変えず、老人のことを虎光に、虎光を老人に、淡々と紹介しただけだった。

 虎光が

「お目にかかれて光栄です。紺野虎光と申します」

 と右手を出すと、老人はその手を握り返し、貴泰に言った。

「立派なご令息で羨ましい限りだ」

 取ってつけたような世辞だが、この老人の持つ雰囲気のせいか、悪い気はしない。

 そのまま彼もこの会談に同席するつもりなのかと思いきや、老翁は

「それじゃ墨塚(すみづか)くん、私はこれで」

 と、首相に一礼すると、ソファに戻らず踵を返した。

 首相はすぐに後ろに控えていたメガネに合図すると、老人を追いかけさせた。

「お見送りいたします」

 メガネのものらしい声のあと、扉のオートロックが閉まる音。

 絨毯が分厚いせいで靴音はなく、まもなく静寂が戻ると、墨塚は貴泰たちに、呼んでおいて茶も出せないことをわびつつソファを勧め、自らも元の場所に腰を落ち着けた。

 虎光が部屋の隅に相変わらず立っている二人のSPにちらりと視線を走らせると、墨塚が言った。


「すまないね。気が散るだろうが、彼らも仕事なのでね」

「ああ、いいえ」

 虎光が慌てて頭を振る。

「お前さんも大変だな」

 貴泰がやや同情的に言うと、墨塚は肩をすくめた。

「それだけ自分がこの国に必要とされていると思えば、悪くないさ」

 それから彼は虎光に視線を移し、

「虎光くんはずいぶん大きくなったなぁ。見違えたよ」

 と、今更ながら驚いて見せる。

 貴泰とこの墨塚首相は大学時代からの友人で、虎光が小さい頃、何度か紺野邸に遊びに来たことがある。

 確か、彼には兄の竜介と同い年の息子がいたはずだ、と虎光が思っていると、貴泰が尋ねた。

「朗(あきら)くんは元気かね」

 墨塚は頷き、

「おかげさまで。もうすぐ二人目の孫が生まれるんだが、東京があの状態だから、病院選びに苦労しているようだ」

「一人目はたしか、泰己(たいき)くんだったか」

「二歳になったよ。今、うちで預かってるが、やんちゃでかなわん」

 墨塚の口調はしかし、孫がかわいくてならない祖父の顔だ。

「そいつは何よりだ」

 貴泰が相槌を打ちながら、ちらちらと意味ありげにこちらを見るので、虎光が居心地の悪い思いをしていると、


「東京から首都を移転させろと紺野が電話で言ったときは耳を疑ったが、まさか本当にこんなことが起きるとはな。今は、忠告に感謝している」


 墨塚がさらりと話題を変えた。


 貴泰が墨塚に東京からの首都移転を進言したとき、当初はけんもほろろの対応だったようだ。

 無理もない。

 今年は暖冬の予報だったし、そもそも都市がその機能を失うほどの異常気象が起きるなどと言われて誰がにわかにそれを信じるだろうか。

 だが、白鷺家や黄根家までが政府に同じ進言をしたことから、政府もこれは検討に値する事態らしいと思い始めた。


 そして、異変は二週間ほど前――ちょうど玄蔵が竜介と一緒に一色家を出た頃――から始まった。


 夜半をすぎると雪がちらつき、昼をすぎても気温が上がらなくなった。

 溶けない雪の上にまた雪が降り、昼間も雪が降るようになると、それはあっという間に根雪に変わる。


 除雪をしても切りなく積もる雪と、気象庁が史上最低気温を報じる日々が続き――

 今、東京は雪と氷に埋もれようとしていた。

 黄根老人の予言通りに。




*(筆者注)挿絵はBing Image Creatorで制作しました。実在するものではありません。

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